動物園というのは、人の限りなく少ない時にくるものだなあ。
人だかりで動物なんて見えやしない。
いや別に、そんなに動物が見たかったわけじゃないけどさ。
動物を見るための大行列、まっすぐ歩くのすら困難。
まったくやりきれない。
そんなことを心の中でぶつくさと、つぶやきながら歩いていると、
一人の少年が私を見ていることに気がついた。
耳には補聴器がついている。
補聴器がどういう仕組みで音が聞こえるようになっているのかなど皆目見当もつかないが、
どういうわけかその補聴器は、私の心の声をうまい具合に拾っているっぽい。
もしくは私は思ったことを無意識に声に出していたという可能性も否定できないが、
その少年以外、私のことなど気にかけている人間は一人もいない。
少年は、しばらく私を見つめている。
こちらも目が離せなくなって、自然、見つめ合う形となっている。
しばらくすると少年がふと視線を私の目から胸の辺りまで落とした。
首からかけていた古い一眼レフカメラが気になったらしい。
私は少年に恐る恐る近づく。
少年は逃げない。
私はしゃがみこんだりせずに、少年を見下ろしたまま、声に出して聞いてみる。
「撮ってみる?」
少年は、顔を上げない。
声はよく聞こえなかったらしい。
ためしに心の中で問うてみる。
「撮ってみるかい?」
少年は驚いたように顔を上げ、次の瞬間にっこりと笑った。
乳歯が抜けて、まだ歯の生えそろってない顔の、なんとかわいいこと。
人だかりで動物なんて見えやしない。
いや別に、そんなに動物が見たかったわけじゃないけどさ。
動物を見るための大行列、まっすぐ歩くのすら困難。
まったくやりきれない。
そんなことを心の中でぶつくさと、つぶやきながら歩いていると、
一人の少年が私を見ていることに気がついた。
耳には補聴器がついている。
補聴器がどういう仕組みで音が聞こえるようになっているのかなど皆目見当もつかないが、
どういうわけかその補聴器は、私の心の声をうまい具合に拾っているっぽい。
もしくは私は思ったことを無意識に声に出していたという可能性も否定できないが、
その少年以外、私のことなど気にかけている人間は一人もいない。
少年は、しばらく私を見つめている。
こちらも目が離せなくなって、自然、見つめ合う形となっている。
しばらくすると少年がふと視線を私の目から胸の辺りまで落とした。
首からかけていた古い一眼レフカメラが気になったらしい。
私は少年に恐る恐る近づく。
少年は逃げない。
私はしゃがみこんだりせずに、少年を見下ろしたまま、声に出して聞いてみる。
「撮ってみる?」
少年は、顔を上げない。
声はよく聞こえなかったらしい。
ためしに心の中で問うてみる。
「撮ってみるかい?」
少年は驚いたように顔を上げ、次の瞬間にっこりと笑った。
乳歯が抜けて、まだ歯の生えそろってない顔の、なんとかわいいこと。
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by kutuganaru
| 2011-05-04 18:16