三十路女のくだらない日々。


by kutuganaru
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夢売るふたり

誰かが言っていたらしいけれど、
映画は、観客の後ろから光がさして、その頭上を通るときに、
見る人々のオーラみたいなものがその光に融合することで、
作品として完成するのだそうだ。
ということは、観客が全員おんなじ位置に座って鑑賞するという事がない限り、
上映一回ずつ、違う作品となるんだなあ、って思った。

その話とはだいぶ違うのかもしれないが、
一緒に見る人と感じ方が違ったりすると、一気に興ざめしてしまうケースもある。
もっと単純に言えば、自分が感動したり、固唾を飲んで画面に見入っているときに、
笑い声とかが聞こえてくると、なんだか気持ちがそがれてしまうのだ。
だからといって、笑いたいところで笑ったり、泣きたいところで泣くのが映画を見る醍醐味だし、
見る人みんなが同じとこで同じ考えをするっていうのも逆に気持ち悪かったりもするので、
非常に難しい話ではあるんだけどね。

ってわけで見てきました。
「夢売るふたり」
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監督:西川美和
出演:松たか子、阿部サダヲ、田中麗奈、鈴木砂羽、安藤玉恵 ほか

予告編こちらからどーぞ
http://www.youtube.com/watch?v=ogDxVs2xTUc

夫婦で小料理屋を営んでいた貫也と里子。店が火事で燃えてしまうところから、
二人の人生が変わっていく。
また最初からやり直せば良いと里子はバイトを始めるが貫也は自暴自棄になり、
かつての常連さんと一夜を共にしてしまう。
腹を立てる里子であったが、そこで妙案を思いつく。結婚詐欺で資金を稼ぐのだ。
里子が見繕った、心に穴のある女性の懐に、貫也が入り込み、金は順調に貯まっていくが、
里子の心の穴はどんどん広がっていき・・・。

とまあ、こんな話である。

私は「ゆれる」で西川監督をスゲーーーと思い、「蛇いちご」をVHSで見直し、
「ディアドクター」はもちろん劇場で、原作本が出ているものに関しては読んでいて、
というくらいで、でも正直「蛇いちご」「ディアドクター」は、そこまで肌に合わなかったなあ、
と思っているようなテンションですが、今回はとても期待していました。

胸を「撃たれ」ました。(「打たれる」だと全然弱い。)
特に、「桐島、」以降自分の空っぽさを再認識せざるを得なかった私にとって、
それはそれは痛い、痛すぎるものでした。

ふたりが結婚詐欺に狙うのは、心に空洞を抱えた女性ばかり。
里子は冷静にその空洞をキャッチし、貫也はその持ち前の愛嬌で、
あてがわれた女性に誠心誠意尽くすことで、その空洞を埋めていく。
そこに嘘はほとんどなく、貫也は女性たちに本当の事を話すし、
たぶん心の一部分では本当に、彼女たちを愛しく思っている。
里子が女性の空洞をキャッチできるのは、
里子の心にも同じような穴がぽっかりと空いているからだし、
貫也が女性たちを癒すのは、里子の心の空洞の原因が自分にあると感じ、
里子をこそ癒したいと心から願っているからではないか。

だからふたりは結婚詐欺に遭うことになる女性たちを馬鹿にするような言動は一度もしないし、
早くお店を初めて、そのお金を倍にして返そうとすらしている。感謝している。

しかしそれでも、健全でない行動というのは、心や感情を徐々に、
目に見えないくらい少しずつ、歪めてしまうものなのだ。
その歪みに気づきながらも、自分を騙し相手を騙し、
気づかないふりを必死で続けていく里子。
貫也に指摘されても、怒りをぶつけたりはしない。
里子は冷静だし合理的だし、貫也を愛しているのだ。

里子が押し殺した怒りはしかし、思わぬところで思わぬ事態を招くことになるのだが、
そこまでのネタバレはしないでおこうと思います。

騙される女性の1人にウェイトリフティング選手がいます。(かなり強そう)
彼女が、怒って家から出て行こうとする貫也を引き止めるシーンがあるのですが、
かなり力強く彼を振り回す事になり、貫也はビビってしまうのです。
そこで彼女、こういいます「貫也さん、わたしが怖い?」

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参考までに、この人です。江原由夏さんという女優さんらしい。
本物の選手と見まごうほどすばらしかったです。強そうでしょ?

ここで冒頭の話なのですが、このシーン、劇場内ではちょっとした笑いが起こったんです。
でもこのときの彼女の切羽詰まった顔、あたし全然笑えませんでした。
こういうこと、ありませんか?男は調子良く好き勝手やってるんだけど、あるときふと、
その女が自分の思い通りにならない、手に負えないと気づいた瞬間に怖くなって逃げ出しやがる。
そういう身勝手な男に、それでもすがりつこうとする愚かな女。
他人事では全くありません。ひとみさん(江原さんの役名)なんてむしろ、かわいいものです。

こういうシーン一つとっても、男女の関係性の妙を、とてもうまく表現してるんです。
心の傷をえぐってくるのです。

私の涙が止まらなくなってしまったのはここ。
貫也が「お前は腹いせがしたいだけだろう」と里子を責めるシーン。
怒りでコップの水を投げつけようと立ち上がった里子はしかし、
水を静かに飲み、「ああ、もう6時・・」と仕事を始めます。
責め続ける貫也に「わからん。貫ちゃんがそう思うのなら、そうなんじゃない?」と
軽い調子で言うのです。

これ・・・、あたしじゃないか。。
(マジで言った事ある)

貫也の言ってることはたしかに当たってるかもしれない、
けどそこに行き着いてしまうのは、貫ちゃんへの愛ゆえじゃないの?
なぜ貫也はそこわかってあげられないのだーーー!!
でも里子はそうは言わない、というより、言えないのだ。
自分で言ったってそんなの、何の意味もないんだから。

ちょっとほんとに収集がつかなくなってきた・・・。

この里子を演じる松たか子さん(←尊敬のあまりさん付け)の演技が、ほんとにスバラシイ。
空虚と闘志を見事に目で表現してる。
怒りを押さえるためにパンにジャム塗って口に詰め込み、
牛乳で流し込むシーンとか、秀逸。

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松さん、最高です!!!

あと個人的には、最初に安藤玉恵とヤッてる風俗店の客?がneoの中村靖日さんだったり、
ふたりが営む居酒屋の客の中にさりげなく山下敦弘監督がいたりしたのがツボだった。

参考までに・・
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とにかくすばらしい日本映画がまた出てきてしまった〜
今年は邦画すげえなあ!!
完全女子目線で見すぎてしまったので、男性の感想が聞きたいです。
見た方ぜひ感想を教えてください!!!
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by kutuganaru | 2012-09-17 22:59 | 映画

トガニ 幼き瞳の告発

もしかしたら数年ぶりに、シネマライズに行った。

入り口にでかでかと貼られてるポスターにまず足が止まります。

「ヴァンパイア」
監督;岩井俊二

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ずっと先の公開だと思っていたけれど、いつの間にかもう来週末の公開となっている!
時が経つのは早いです。抗いがたい年齢というものを、こんなところで感じました。

気を取り直して

「トガニ 幼き瞳の告発」
監督:ファン・ドンヒョク
主演:コン・ユ

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昨日のシネマハスラーでも扱われていましたこの作品、
もちろん公開前から気になってはいたんですが、扱っているテーマの重さ、
そしてR18というレイティングから、結構えげつない映画になっているのでは、
とかなり警戒してまして、劇場に足を運ぼうか迷っていたんですね。
でも昨日の宇多丸さんの映画評を聞く限り、これは見ておいて方がよさそうだ、
と思った次第。

結果、見ておいて本当によかった。宇多丸さんありがとうございます。

■ストーリー
 霧の街、霧津(ムジン)にある聴覚障害者学校「慈愛学園」に美術教師として赴任した
 主人公が、聴覚障害児に対する教師たちの性的虐待の事実に立ち向かっていく社会派サスペンス。

これは実話を元に書かれた小説が原作になっている映画なのですが、
実際の事件は当初、かなりうやむやに、なんの解決もせぬまま、収束してしまったらしい。
その事態を問題視した原作者が小説を出版し、それを読んだ主演のコン・ユが
自ら出演を熱望し本作が製作されたのだという。
小説、映画の影響で再び問題視されたこの問題に、署名運動が巻き起こり、
ついには「トガニ法」という法律ができ、問題となった学校は廃校となったということです。

これらの出来事で特に注目しないといけないのは、一度この問題が風化しかけてしまった事実、
つまり社会問題をただ単に「消費」している情報の受け手である私たち自身の無責任ではないかと。
これは韓国の話だけれど、日本でもまったく同じ話が言えると思う。
センセーショナルな事件ははじめは大々的に取り上げられ、誰もが知っている事件に発展もするが、
次にもっと刺激的な事件が起きたとき、または自分に何らかの一大事が起こったとき、
それらはあっさり忘れてしまう。
そもそもそれらの事件に対する意見も、ほとんどがマスコミの受け売りとなってしまう。
判断材料がそれしかないんだから、しょうがないとも言える。
だけどその陰で、傷み、悲しみ、下唇を噛み、涙している人がいる事実、
もしくはほくそ笑んでいる人間が存在する事実を忘れてはいけないんだと思った。

そして重要なのは、風化されかけた事件を終わらす事なく問題視し続け、
さらにそれを世間にもう一度注目させるための手段としての小説、映画であるということ。
例えば方法として、町中で署名活動をする、道ばたで拡声器を使い、涙ながらに訴える、
新聞や雑誌に記事を投稿する、など、人それぞれにアプローチの仕方というのは様々あって、
それらはいろんな状況に応じて、効果をなしたりなさなかったりするだろう。
今回のように小説、映画というフィクショナルな世界を用いることで問題提起するという事は、
言わずもがなその表現の善し悪しによって世間からの注目度が変わってきてしまう。
そしてこの映画は、フィクションの映画として、物語としてのできがとてもよかったために、
世間から再び注目されるきっかけになったのは間違いない。

その意味でいうと、(シネマハスラーで言ってたことそのままだけど)
2008年公開の阪本順治監督「闇の子供たち」なんかは、
もちろん見て思う事はたくさんあったけれど、作品の完成度として
なんだか煮え切らない感じで終わってしまった感が否めない。

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法律が改正され学校が廃校になったという意味では
被害にあってた子供たちにとって、とても意味のある作品であることは間違いないし、
何か問題が起きたとき、報道を見たとき、それらに対して傍観者足り得る自分がどうすべきか、
考えさせてくれたという意味でこの作品は自分にとって意味のある作品であったのだから
すばらしい映画であるに決まっているでしょうがよ!!

見ていてとてもつらいけど、胸くそ悪くなる寸前のところできちんとフィクションに
落とし込んでいるので、
見る前に危惧していたよりは普通の映画として目を背けずに見る事ができました。
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by kutuganaru | 2012-09-09 23:47