三十路女のくだらない日々。


by kutuganaru
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<   2009年 01月 ( 9 )   > この月の画像一覧

第3話

「ぼん、あたしにも、牛乳」

 千代は、ぼん吉の方を見ずに、言う。
 仰向けになったまま、固まった足首をゆっくりとほぐす。
 ぼん吉は、何も言わずにキッチンに立つと、冷蔵庫から1リットルの
牛乳パックを取り出し、流しの下の戸棚から、一番小さい鍋を引っ張り出した。
流しの下は、大きさの様々な鍋やボール、ざるなどが混在している。
 だけど、ぼん吉は、鍋やらボールやらを一つも落とさずに、上手に一番小さい鍋を
選びとった。
 洗濯物は、倒していたのに。

 小さい鍋に、牛乳をとぼとぼ入れて、ぼん吉は火をつける。
慎重に、火の大きさを整える。最初は中火。それから、弱火。
消えないギリギリの火の大きさで、しばらく鍋の中をじっくりと観察し、
小さな泡が浮き上がってくると、火を止めた。
 その間、一度も目を離さない。まるで、実験中の、科学者みたいだった。
大きな眼鏡が曇るたび、トレーナーの裾で、ごしごし擦った。

 食器棚の中で、一番大きなマグカップを選び、ぼん吉は鍋から直接、注いだ。
 たくさんこぼれたけど、マグカップの8部目で、ちょうど良かった。

 注ぐときに縁にたくさんついた、温かくべたついた牛乳を、台布巾で丁寧に拭いて
千代の前に置く。
 
 ほのかに甘い匂いと、カップを台に置く時のゴトン、という鈍い音に、
仰向けになった千代はのっそりと起き上がる。
 カップを拭いたのが台布巾であることも、冷蔵庫の牛乳の賞味期限が
4日過ぎていることも、千代は知らない。
 ぼん吉が牛乳の賞味期限を確認して、ちょっと迷ったけれど火を通すから
大丈夫、と考えたことも、温めている間中、腐った匂いがしないかと、鼻に
神経を集中させていて、その小さな鼻がぴくぴく動いていたことも、千代は知らない。

 だから千代は、
「あったけーー」
と、マグカップを両手で包んだ後、冷えきった耳や鼻にあてて、それから
ごくごくと威勢良く飲んだ。
 ぼん吉が、丁寧に観察していたから、千代は下上あごも、火傷しなかった。
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by kutuganaru | 2009-01-31 01:15

第2話

 足首がつるのと、目が覚めるのが、ほぼ同時だった。
 いつのまにか陽はまっすぐに射していて、面積は増えていたけれど、
足先を置いた部分は陰になってしまっていた。
 仰向けになった腹の上に、バスタオルがかけてある。
 洗濯物の山の、真ん中くらいから引き抜いたものだ。
 取り込んでそのままの、山が、半分倒れている。
 バスタオルは少しだけ、生乾きの匂いがした。

 ぼんやりと、居間を見渡すと、ぼん吉がいた。
 コタツで、パックの牛乳を飲んでいる、ストローを差して。

 「学校で飲めなかったから。」

 ぼん吉は小学生だ。多分、小学校3年生か4年生だけど、千代は覚えていなかった。
 興味がないから。
 千代は、子供が苦手だ。
 自分が子供のころから、苦手だった。
 だから、自分の事が苦手だった事もある。
 ぼん吉だって、それが本名っていう訳じゃない。

 ぼん吉は、親戚でも、ましてや兄弟っていう訳でもない。
 訳でもないのに、勝手に家に上がり込む。
 上がり込んで、千代が風邪をひかないように、バスタオルをかけたりするのだ。

 ぼん吉は、今どき珍しい坊ちゃん刈りが、「まことちゃん」みたいな、
 かわいい男の子。
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by kutuganaru | 2009-01-29 23:53

第一話。

 あと、10センチ。あと、5センチ。2センチ、5ミリ・・・。

 庭に面した大きな出入り窓に、日の光が差し込む。
 午前10時の光は、大きく傾いていて、だから陽の当たる部分が遠い。
 
 千代は、パジャマ代わりのジャージから出た素足の甲を、めいっぱい伸ばして、
フローリングの明るい部分に届こうとした。けど、届かない。
足がつりそうになって、結局背中をちょっとだけずり、目的の場所に足を放る。
 温かい。
日の光を浴びて、千代の足の爪が、ぎらり、と光った。
背中の下のカーペットが、少しだけよれて、心地悪かった。

 少しだけ開いた窓から、思い出したかのように、時折ゆるい風が吹く。
 さらさらと風は、真っ白いレースのカーテンを揺らした。
 風はゆるいが、しかし冷たい。
 足先の感覚がなくなりそうなのを、日の光が寸でのところで、溶かす。

 時折揺れるカーテンは、千代の塗ったばかりのペディキュアをかすめ、
親指、人差し指、中指、と、少しずつはぎ取って行った。
背中の下の、カーペットに似ていた。

 千代は、煩わしさと、寒さと、それに相反する温かさと背中の違和感とを、
なんとなく全部一遍に感じた。
それらは全部がミキサーにかけられて、一緒くたになり、そうして、
結局、眠気になった。
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by kutuganaru | 2009-01-29 01:08
屋根に付いた、蛍光灯がチカチカして、でも8割方消えてる、公衆電話。

半透明のゴミ袋いっぱいに入って、電柱の根元に置かれている、色とりどりの、千羽鶴。

ラブホテルのゴミ箱に、力なくうなだれる、白い液体を包む、桃色のコンドーム。

瞬きしたとたん、急にすべてをあきらめたような空虚に支配される、赤ん坊の瞳。

電話番号の書かれた、薄っぺらいチラシが所狭しと貼られた、自動販売機。

はら綿がはみ出したまま、赤い屋根の犬小屋に放り出されてる、ウサギのぬいぐるみ。

そんな、美しく、きらきらしたものたちが、
頭の中に浮かんでは消える、
耳の感覚がなくなるほど、寒い夜。

誰にも会いたくないな

一瞬だけ、そう思った。
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by kutuganaru | 2009-01-27 00:01
言葉の海を、泳いでいる。

と、いうと聞こえはいいけれど、そんなに、いいもんじゃ、ない。

海は、本当の、言葉なのだ。比喩でなく。

安穏、金字塔、たゆたう、厳か、はいむるぶし、ディフェンス、いえども・・・

そういう、なんのとりとめもない言葉ばかりの波に、
投げ込まれ、
押しては返し、穏やかに揺られ、陸なのか、とにかく波の押し寄せないところに、
打ち上げられてはまた、引き戻される。

疲れるのだ。
とにもかくにも。

言葉は、ときに暴力だ。
殊に、これは、直接的な暴力だ。比喩でなく。


しかしそれも、うららかな午後の見せた夢。

わたしにぶつかり、覆い被さり、冷たく突き放し、そんな波に
心底辟易して、投げやりに、波に身を任せ始めると、
ふいに、波はゆるやかになり、生温い風が鼻の頭をかすめたなあ
と思ったら、それは会社の暖房が、
ぼうっと、一瞬だけ、強く吹いただけのもので、
目の前のパソコンの画面は、

mmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmmm

となっていて、
「よろしくおねがいし」まで打って、そのまま寝てしまったようだった。

あとちょっとだったのに。


『姑獲鳥の夏』実相寺昭雄?
京極夏彦原作の、京極堂シリーズ第一段。
偶然ですが、三年身籠るに続き、二十ヶ月身籠った女の話。
まあ、話は、当たり前のようにおもしろいのですが、
わたしがすごいなあって思ったのは、

恵俊明。

いや、恵はほとんど写真でしか出てこないんだけど、
だって、恵だよ。
2時っちゃお、だよ?

その恵が、安く見えない。
ということが、
素晴らしいと。

例えば、『Lチェンジザワールド』に出て来た南ちゃんは、
すごく安く見えたけど。

良き映画とは、こういうことなのかもしれないなあ。
と、ぼやあ、っと思ったのでした。
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by kutuganaru | 2009-01-22 23:28
あの人は、こんな顔をしていたのか。

たしかにそう思ったのに、顔だけがおぼろげで思い出せない。

カーキ色した、薄手のセーターを着ていた。
髪の毛は、ちょっとだけ、天パだった。

けど、顔は?

そこだけ、周りにとけ込むような、ぼんやりと、もざいく?かけてるみたいな。

あれは、誰だったのだろう。


『三年身籠る』
三年間、子を身籠った。
身籠る事が、一つの、一つだけの、確信。
お母さんが、そんなんだから、子供は、産まれてこなかった。
産まれたら、喜ばれないかもしれないでしょ?
お父さん、恋人いるし。
二年目、お父さんは、怖くなった。
恋人は、いなくなったけど。
お母さんは、勇気出したけど、まだ足りないってさ。
三年目、お母さんは、死ぬほど、痛い。
子供は、しゃべるし泣くし、暴れるし。
お父さんは、信じた。
だから産まれて来たんだよ。
まったく、こんくらいのこと、十月十日のうちに、済ませてよね。

『ゆれる』
映画、すごかったけど、本も、すごかった。

これが、映画って感じ。
だし、本も。

考えると、もっと深くまで、いける。

いけるよ。
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by kutuganaru | 2009-01-19 23:29
映画も見ました。

「K−20」
痛快!!
なんにも考えないで楽しめる話!!
になるはずだったのに・・・
一部一部がねー、やっぱちょっと重いんだよね。
貧富の差とか、子供だけで暮らす村とか、そんなん見て、素直にげらげら笑えないっしょ。
ただ、金城武ってすごく良い俳優なだーって、またしても思わされた。
このブログで、金城武ばかりを絶賛しているような気がするけど、実は別にファンじゃない。

「全然大丈夫」
ええ、大丈夫ですとも。
なんとかなりますとも。
こんなに、ほっこりした気分になれる映画って、案外珍しかったりすると思います。
世のほっこりした映画って、なんていうのかな、だいたいが、ほっこりの押しつけっていうか、のんびりの押しつけっていうか。
そういう感じがして、見るときによってはイライラしちゃうんだけど、
この映画はちっとも、押し付けがましくない。
まったく。
むしろ、見たいなら見れば。
みたいなスタンス。
最高です。
木村佳乃よかった。(ココリコ田中も。)

「僕たちと駐在さんの700日戦争」(?)
タイトル長くて、定かじゃない。
これは、なんていうか、もろステレオタイプ的青春ムービーかつ規模がものすごくちっさい、っていう、なんら変哲のない物語。
じゃあ、何がいいのか。
キャストでしょ。
市原隼人(ルーキーズあにや的リーダー格が板に付き過ぎている。わたしはリリイシュシュの時のような繊細な役をまたやってほしいと願っているが)
佐々木蔵ノ介(天才役者)
麻生久美子(天才的美しさ)
あと、名前わかんないけど、超声高い男の子役者(花より男子とか出てた)が、めっちゃかわいいくて◎
こりゃあだれでも、ついつい笑っちゃいますわな。
ってな規模の小ささが、やはりわたしは気に入っているのだろうか。
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by kutuganaru | 2009-01-10 16:39 | 映画

ニート6日目

写真、たくさん乗せますって言ったのに、乗せ方がわからなくなってしまった。
時間かかりそうです。

それはそうと、年末で仕事やめてしまったので、ニートです。

一週間、がむしゃらに職探ししましたけど。
まあなんとかなるっしょ。

んで、
何ヶ月ぶりか?に自分の時間が、有り余るくらいできちゃって、
久しぶりすぎて、なにしていいか、わからなくて、まあ、基本的には暇で惰眠を貪ったり、お菓子類を貪ったり、しているわけですが。

久しぶりに、本を読みきりました。

「有頂天家族」森見登美彦
有頂天な、狸一家の話です。
京の都は、その昔から、人間、天狗、狸の3種がないまぜになって暮らしているという。
京に風吹けば、それは天狗が風神雷神の扇を振りかざしたからだし、その辺を歩いている、ちょっと浮き世ばなれしたカップルは狸が化けているものかもしれぬ。
それを、私たちが分かるすべもないのだけれど。
そんなこたあどうだっていいじゃないか。
狸が喰われる事なく、天狗の尊厳が失われず、人間が天狗になんてなろうとしなければ、みんなハッピー、阿呆の血が騒ぐってもんだ。
踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損。
とばかりに、みんな面白い事を求めて右往左往。
ってなもんで、終始どんちゃん騒ぎを楽しみました。

なのに、家族愛あり、天狗と狸なのに人間愛あり、ジーンと来ちゃいました。
やられた。


「鴨川ホルモー」万城目学
2冊続けて京都を舞台にした本であるが、先日京都を旅してきたので、登場する現場がいちいち想像出来て、嬉しい限りである。

ホルモーとは、戦争ゲームである。
では誰がやるのか。鬼や式神の類いである。
しかも、その得体の知れない類いのものを実際に操るのは、大学生である。
さらに、その戦争ゲーム、大学のサークル活動として行われるのだ。
この意味のわからなさ、それこそ、この本の魅力である。
実は、はっきりいって、この本を読んでも、ホルモーの事がそんなによくわかる訳ではない。架空のゲームだろうから、しょうがないだろう。
ようは、ホルモー自体は二の次なのだ。
なんで、こんな得体の知れないサークルに、10人もの新入生が引き込まれて行ったのか、その人間模様が面白い。
荒削りなだけ、生の大学生っぽくて、いいんだなこれが。
あーわかるわかる!
みたいな?

山田孝之主演で映画かされるのですが、鬼や式神の類いの描写などが、どろろみたくなってしまわなければいいのですが。
ってゆうか、多分なるよね。
やつらの、うまい表現の仕方が思いつかない。
楽しみにしてます。
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by kutuganaru | 2009-01-10 16:17 |

おめでとう

あけました。

2009

今年は、年賀状が、わたし史上ではたくさん届きました。

ありがとう。

ことしは、ブログ頑張って書きます。

写真もたくさん乗せますえ、みんな見てね。


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by kutuganaru | 2009-01-05 23:56