三十路女のくだらない日々。


by kutuganaru
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強いだけの女なんかいない『百日紅 Miss HOKUSAI』

『百日紅 Miss HOKUSAI』@シネ・リーブル池袋 2015/6/13 

<ストーリー>
江戸風俗研究家で文筆家や漫画家としても活躍した杉浦日向子の漫画代表作「百日紅」を、「カラフル」「河童のクゥと夏休み」の原恵一監督がアニメーション映画化。浮世絵師・葛飾北斎の娘で、同じく浮世絵師として活躍した女性・お栄が、父・北斎や妹、仲間たちとともに生きた姿を、江戸の町の四季を通して描く。

監督/原恵一
原作/杉浦日向子
脚本/丸尾みほ
キャラクターデザイン/板津匡覧
美術監督/大野広司
出演/杏・松重豊・濱田岳・高良健吾・美保純 など

原恵一作品初体験。
話題になっている事は耳に入っていたのですが、
クレヨンしんちゃんとかは、あまり見ない方なので、
これまで見る機会がなかったのです。

これまで見てこなかった事を後悔するほどではないけれど、
この作品は、とってもよかった。とっても、じんわり、よかった。

まず冒頭、
百日紅の花が落ちて、
主人公のお栄さんが「長い夏が始まるねえ」という、
そこに音楽が乗ってきて、タイトル(だったはず・・!)

それだけで、なんだか涙腺が弛んでしまった。
その時点で既に、私の感情をどうにかする作品である事が、
わかってしまった。

あとはもう、引きずられるだけ。
物語に、お栄さんに、北斎の書く龍に、もののけに、スクリーンに。
現実も物語も入り交じった、私を取り巻く全てに。

ところで私は絵が苦手である。
絵?じゃないな。。美術?芸術?
よくわからないけれど、
美術館などに行くと、たまにモーレツに退屈してしまうのだ。

美術を鑑賞する、楽しむためには知識が必要で、
その知識をわきまえていないと楽しめないような気がしてしまう事があって、
要は、絵を見ているだけでバカにされているような、
疎外感のような、そんなものを感じてしまうのだ(←被害妄想)

北斎の絵は違う。
歴史とか、文化とか、当時の時代背景とか、
そういったことが何もわからない私でも、
楽しんで良いんだよ、と言ってくれているような、
度量の深さ、というよりはもっと軽やかな、単純なユーモアを感じる。

そこが好きだ。
軽やかなものは、いい。

映画を見ていると、
北斎とその娘、お栄には、小難しいところやこだわりがほとんどない事がわかる。

自炊はしない、掃除もしない、
家が汚れたら全部置いて引っ越せば良い。
親父と娘、筆2本と箸4本あれば、どこでも食っていけるさ。

なんと粋なこと・・!

逆に、駆け出しの絵師、善次郎が家に勝手に住み着いてもおかまいなし。
野良犬がいつの間にか家に入ってきても、しかり。
書き上がった絵がダメになった時だって、
怒ることもなく、だた、なくなってしまった、
という事実だけがそこに残る。

絵は、その目で見たものしか、描く事ができない。
だから、色いろなものを見る。
なんてシンプルなのだろうか。

そういった生き様が、そのまま作品になっているのだと、
なんだか妙に納得してしまった。
(真実は知りませんがね。)

主人公である北斎の娘、お栄さんは、
粋で、とても男らしい女性です。
絵を描き収入を得て、母親孝行に妹孝行。無口で人の世話ばかり。

そういう「強い」女性は、得てして一人です。

彼女の「強い」仮面の下に隠れた、弱さをわかってあげられる男性が、
一人でもいなかったのか。
例えば、歌川国直くらいは、本当は気づいてあげるべきだったのではないのか?
(北斎はわかっていたんだろうが、父だし、照れくさかったんだろうな)

でも、もしそうだとしたら彼女は生涯独身じゃなかっただろうし、
(一度は嫁いで、だめになったとのこと)
生まれずに終わったかもしれないすばらしい作品もたくさんあるのだろうから、
まあ、これでよかったということなのか。

そもそも、よいも悪いも、その人の人生なのだから、
私ごときが口出しするのは無粋ですね。

少しは、お栄さんの粋を見習いたいものです。
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by kutuganaru | 2015-06-15 00:07 | 映画