三十路女のくだらない日々。


by kutuganaru
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悪の教典【ネタばれあり】

だいぶ前の事ですが、会社の先輩に「冷たい熱帯魚」を軽い気持ちでオススメしたら、
それからすっかり猟奇キャラになってしまいました。
おかげで血みどろ、スプラッター、暴力、セックス、サイコスリラーの情報には困りません。

そんな中話題になったこの原作小説を、映画公開1週間前に借りて読みました。


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そもそも、このカラスの表紙で全然読む気になれない(怖そうだから)


借りても最初は全然読む気になれなかったんですが(なにせ怖そうだから)、
映画は気になっていたので、タイミングも良いし、と思って読み始めたら、
ナニコレ、すごく読みやすい。

(思ったほど怖くないじゃん)

と上巻はスラスラ読み、すぐに下巻に着手すると、中盤くらいから様子がおかしい。

(え。怖いんだけど。めちゃくちゃ怖いんだけど~~~!!!)

恐怖におしっこチビりそうになりながらなんとか読み終えました、公開前日。

そして、公開日に行ってきました。

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@ユナイテッドシネマ浦和。
20時45分開始の回にも関わらず8割方埋まってました。主に若者。
男女比はそんなに偏りなく、カップルがやや多いように感じました。(ちなみに私は1人)
さすが海猿です。

原作:貴志祐介
監督;三池崇
出演:伊藤英明、二階堂ふみ、染谷将太、浅香航大、林遣都 ほか
ストーリー:生徒からも教師からも人望の厚い、「よくできた」教師、蓮実聖司。
       しかし彼は、他人との共感能力を持ち合わせていない、サイコパスであった。
       自分に都合の悪い人間は排除しながら、自分の居心地のいい場所を確保しながら
       生きてきた彼は、ある些細なミスから、クラス全員皆殺しをする計画を実行する・・。


映画を見ていてまず思ったのは(小説読んでない人にわかるのかな?)ということでした。
小説を前日に読み終えた私にとっては、小さなヒントから、小説の一部分を想像することが可能でしたが、
読んでいない人からしたら、謎のカットが入ったなと感じるであろう部分がしばしば。

私はこの間のタマフル秋の推薦図書特集でおそらく伊藤聡さんがおっしゃっていた事を思い出しました。

「映画化するのに適しているのは短編小説である」

それに対してこの作品は、すらすら読めてしまうとはいえ、文庫でも上下巻。
映画で表現するにはちょっと長過ぎたのでしょう。

以下ネタばれ入ってくるので、隠しますが観た人(もしくは小説読んだ人)は読んでください!!





小説版の一番の魅力は、なんと言っても下巻中盤から始まる、蓮実による大殺戮ショーです。
わたしがおしっこチビリそうになったところです。
武器はほとんど散弾銃のみなのですが、それに使う弾の違いや、それぞれの生徒の心の動き、会話、
蓮実の側の心理状態、それらを詳細に描く事により、グロい表現などはないにも関わらず、
非常にスリリングな組み立てになっています。
蓮実がカウンターを用いて、1人1人をある意味丁寧に殺していく様はとても気持ち悪いし、
その理解できなさが怖さに繋がる。

ところが映画では、この殺しが非常にサクサクと進んでいくのです。
尺の問題なのでしょうが、原作最大の魅力が半減してしまっているのが、非常に残念。
せめてカウンターだけでも入れられなかったのか?それだけで分かりやすさもだいぶ変わったと思うし、
何よりキャッチコピーの「出席を取るように」という部分が強調出来て、理解できない怖さは増大したと思います。
あと最後のどんでん返し?的展開の驚きもより大きくなるはず。

あと、原作では生徒1人1人の行動に、出来る限りのもっともらしさ、現実味があり、
共感できることで、正体不明の殺人鬼に追われる恐怖というのが増すのですが、
映画には到底理解できない行動を起こす生徒が出てきます。
アーチェリー部の高木君と、恋仲にある設定の白井さん(←この設定は映画オリジナル)です。
あたしが理解できないだけなのかな・・
イマドキの高校生って【恋愛>命】なの??マジで?それともギャグなの?だとしたらいらなくね?

残念な部分をもう一つ挙げるならば、山田孝之の扱い方だと思います。
まあ唯一笑える箇所ではあったけど・・その笑い、必要?
原作での柴原教諭は、やくざみたいなエロ教師として、その存在感を存分にまっとうするけど、
山田孝之は、なんだか挙動不審の変な人、という印象で、作品内の存在意義が全く見当たりませんでした。


ただ、さすが三池監督、というべきなのかは分かりませんが、
映画ならではの良くなっている部分というのも意外とたくさんあるのです。

まず、役者陣。
正直主演の伊藤英明さんは、ちょうど期待と同じくらいの役割を果たしている、といった感じだったのですが、
吹越満さん演じる釣井教諭なんかは、小説版よりよっぽど味があって、不気味さと人間らしさの共存を
見事に体現していて、読んでいてちょっと不思議な存在だった釣井教諭の実在感が増していました。
そしてもう言うことなしの生徒役の面々。
染谷将太君演じる早水と、二階堂ふみちゃん演じる怜花と釣井が一堂に会するシーンは、思わずニヤついてしまいました。
すね毛と腋毛を剃ってゲイの役に挑んだ林遣都くんも、中性的な存在感と役がマッチしていてキュートです。
そしてそんな中で頑張る、「桐島~」の友弘役でおなじみの浅香航大くんも良かったです。
他にも同じく「桐島~」で大活躍したサナちゃん役の子とか、「鈴木先生」や「告白」にも出演していた子数名、今「高校入試」に出てる子もいたな・・。
最近学園もの流行ってんのか?ってくらい見たことある子がたくさんいて探すのも楽しいし、
それぞれが見た目だけじゃない、骨太の役者さんたちなので、見ていて安心感があります。

また、小説版には多く出てくる教師陣の絞り方もシンプルで分かりやすく良かったし、
惨殺ショーが軽快な音楽(マック・ザ・ナイフ?)に合わせたちょっとしたミュージカル調になってるテンポ感は嫌いではなかったです。

そして、何より小説版より良くなっていると思ったのはラスト。
警察に連行される蓮実に向けて怜花の放つ
「こいつは次のゲームを始めている」というセリフからの、蓮実の
「Magnificent」。
序盤、英語教師である蓮実が生徒を褒める際に使う「Good」と「Excellent」の違いを質問され、
それよりさらに最上級の称賛を表すのに使う単語として説明するシーンがありますが、
それが見事な伏線になっているのです。
小説版には説明する授業のシーンはありますが、ラストのセリフは怜花でなく、
下鴨刑事という人物の心の声として書かれているに過ぎません。
このラストは映画ならではの役者の演技(二階堂ふみちゃんの目力)も相まって、
映画版の方が素晴らしく良くなっていると思います。

このように、映画として良くなっている部分はたくさんあるのです。
あるのですが。。

やはり小説版最大の魅力が半減しちゃっているのに加えて、
蓮実のキャラクター設定がいまいち分かりにくかったために、
結果としてはちょっと残念と言わざるを得ません。

蓮実はあくまでサイコキラー(快楽殺人者)ではなく、サイコパス(反社会性人格障害)であり、
その共感能力の欠如こそが一番奇妙であり、だからこそ計り知れない恐怖を人に与えうる存在となるのです。
映画版では、蓮実が殺人を犯す理由づけがいまいちはっきりしていないために、
見方によってはただのサイコキラーに見えなくもない。
サイコキラーだってそりゃあ怖いけれど、そんな作品は世の中にたくさんあるし、
こちらはその怖さの限界をなんとなく知っているのだから、その違いをもっとしっかりと表現してほしかった。

というわけで、この原作本を貸してくれた会社の子の言葉を借りるなら「60点」な作品でした。


今回は、原作本を読んでからその熱の冷めないうちに映画を見れたので、
詳細な比較が出来て面白かったです。


とにかく、なにはなくとも「染谷将太はかっこいい」。
彼の色気を堪能出来ただけでも、満足でしたと言ってしまっていいかもしれないな。。
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by kutuganaru | 2012-11-16 18:11 | 映画