三十路女のくだらない日々。


by kutuganaru
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ノルウェイの森

よい「映画」には、何種類かあると思っている。

鑑賞後、なんらかの思いをめぐらせてくれるものもそのひとつであろう。
登場人物に共感できるかどうかも、重要なポイントである。
また、役者がよい演技をしているかどうかが作品の良し悪しを左右する場合もある。
ド派手なアクションなんていうのも、映画ならではのよいところではないだろうか。
監督の強い思いが、きっちりと、ぶれることなくダイレクトに伝わってくると、なおいい。

そして、映画でしか堪能できない重要なもうひとつの要素、それが映像の美しさである。

「ノルウェイの森」
監督:トラン・アン・ユン
原作:村上春樹
出演:松山ケンイチ、菊池凛子、水原希子

言わずと知れた奇才村上春樹の同名小説初の映画化となる本作。
ちなみに小説版は、私が村上春樹小説の中で、唯一まともに読んだ長編と言える。
それ以来、めっきり春樹から遠ざかってしまった。
理由は単純に、訳がわからず楽しめなかったことにある。
中学生だったわたしは、もはや読書などではなく、ただ目の前に連なる文字を追っていただけと言えるほどに、
物語に入り込めなかった。
だから内容などろくに覚えているわけもなく、
私の中の「ノルウェイの森」は、なんか暗い人がぼやき続ける、とてつもなく暗い小説、だったのである。

本作は、私の中の灰色の小説「ノルウェイの森」に、たくさんの色をつけてくれる、そんな映画であった。

ただし暗いところはあくまで黒く、むしろどす黒く、しかし明るいところは太陽の光ほどに明るく、
その濃淡をしっかりと、そしてとても美しく、描ききっている。

黒く描かれる直子とカラフルに描かれるミドリの対比。
そして直子、ミドリそれぞれの中の黒い部分と明るい部分の対比。
女性対男性としての対比。
愛というものに実直であろうとすることと、性への欲望との対比。
夏と冬の対比。

そのどれもが矛盾することなく、私の中に入ってくるほど説得力のある映像美。

トラン・アン・ユン監督の、底知れぬこだわりに、圧倒されるばかりである。

いろいろなものにがんじがらめになって、身動きの取れないワタナベを哀れに思い、
奔放で、性に対しても積極的なミドリを羨望し、
過去から解放されずに苦しみ続ける直子に、私の中の何かが共感した。

そして1970年代(?)のレトロポップなインテリアやファッションはとてもかわいく
それだけ見ていても決して飽きない。

期待しないで見に行ったというのもあるかもしれないが、
予想外にとてもいい映画を観た気分だ。
今の私の気分に、なんとなくフィットしたのかもしれない。

★★★★☆
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by kutuganaru | 2011-01-03 22:02 | 映画